椎間板ヘルニアにおける牽引治療の効果
椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間が狭くなっていることから、牽引治療で引っ張れば『狭くなった背骨の間隔が広がる』ようなイメージもありますが、実際はそんなに単純ではないようです。
牽引治療で劇的な改善はない
腰椎の椎間板ヘルニアに対する『牽引治療の効果』を研究した論文はいくつかあります。
患者さんの体重の10%、30%、60%の力で牽引した時の改善率の比較や、持続的、もしくは断続的に牽引した時の比較など、さまざまな研究がされています。
しかし、牽引治療で腰椎の椎間板ヘルニアに『劇的な改善が見られた』という報告はなく、治療をしなくても自然回復していたことも考えられる程度でした。
腰痛における牽引治療の効果
ぎっくり腰や椎間板ヘルニアを含めたさまざまな腰痛において、『牽引治療の効果』を研究した医学論文はいくつかあり、1995年の段階でそれらの論文をまとめた内容が発表されています。
それによると、ぎっくり腰などの急性腰痛に『牽引治療が効果的である』という論文は1個(4個は効果がないと判断)、慢性腰痛に効果があるとした論文は2個(1個は効果なしと判断)、原因不明の腰痛(2つの論文)と腰椎椎間板ヘルニア(4つの論文)に対しては、『牽引治療が効果的』と結論づけた医学論文は1つもありませんでした。
これらの内容から、牽引治療が効果的な腰痛は『慢性的な症状に限られる』のではないかと考えられています。
牽引治療はまだ研究段階
ただ、牽引治療の方法によってはSLRテストの改善がそれなりに見られた、という医学論文も2000年に報告されているので、まだまだ研究段階だとも言えます。
しかし革新的なことがない限りは、効果があるかどうかは微妙なところで、効果があっても牽引治療で劇的な改善が見られることはない、と考えておいたほうが良いと思います。